おわりに

 商業、業務、行政機能等の都市機能が集積し、都市型居住の場でもある中心市街地(まちの中心)は、「都市の顔」と評されることも多い地域経済の集積拠点である。

 

 今後、情報化が一段と進展し、生産活動、生活行動の変容が見込まれるが、人間がリアルな空間に生きる存在であり、産業集積や都市機能集積の規模や酒類、人口の集積がシナジーを生む「規模の経済」「範囲の経済」「密度の経済」が成立する以上、中心市街地(まちの中心)は、引き続き大切な活動の場となり続けるはずである。本稿では、その役割を維持するために有効だと考えられる方向を「中心市街地活性化2.0」と規定して提起した。

 

 中心市街地(まちの中心)は、地域の市場結節点であり、中小企業診断士が支援対象としている中小企業や商店街の立地点である場合も多い。したがって、「中心市街地活性化2.0」は、まちづくり関係者に対してだけでなく、こうした産業や、地域団体の活力を支えるエコシステムの形成に関わる問題提起でもある。今後のまちづくりや、まちづくりに関わる政策形成はもとより、中小企業の支援活動等の参考にもしていただければ幸いである。

 

 ただし、本稿の執筆時点で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響や、ICTを活用したまちづくりの動向は、まだまだ変化の余地も大きく、引き続きその趨勢を確認する必要のあることは言を俟たない。

 

 まちづくり研究会としては、引き続きコロナ禍における中心市街地(まちの中心)の状況や、中心市街地活性化2.0の考え方に基づくまちづくりの有効性を検証する予定である。また、機会を捉えてこの問題に関心を持つできる多くの関係者のご意見を拝聴し、あるべき取組を検討するとともに、その実現に資する情報発信を続けていきたいと考えている。