はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、われわれの生活や社会システム全般に大きな影響を及ぼすこととなりました。特に地域構造の面では、経済合理性追求のもとで加速していた集中指向を大きく減速させることになり、長らく継続していた東京一極集中の傾向が変曲点を迎え、テレワークの普及等の新たな生活様式が定着することになりました。

 

 こうした状況変化のもと、東京都中小企業診断士協会まちづくり研究会では、コロナ禍の発生直後から変化を余儀なくされたまちづくりの状況と課題について会員相互で意見交換を行い、2021年3月にアフターコロナを展望したまちづくりのあり方「中心市街地活性化2.0」を公表しました。そこで提起した、中心市街地(まちの中心※1) の活性化に当たっても、分散が進む業務機能の立地を促進すべきという提言は、生活機能のみに着目していたまちづくりのあり方に一石を投じ、関係者から一定の評価を頂くことができました。

 

 一方、その後2年間を経るなかで、依然としてコロナ禍は継続しているものの、徐々にウィズコロナの生活様式が定着しつつあります。新型コロナの感染症法上の位置づけについても、今年5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針が打ち出され、患者や濃厚接触者に対して適用されている行動制限がなくなります。また、デジタル田園都市国家構想等の新しい政策に基づく取組が推進されており、まちづくりを取り巻く環境が再び大きく変化しつつあります。

 

 本稿は、こうした状況を踏まえて、前回提言後の状況を再確認し、改めて今後取り組むべきまちづくりの課題を明らかにすることをねらいとしてとりまとめたものです。今後の実りあるまちづくりに向けて、関係者の取組の一助となれば幸いです。

 

 

2023年3月

東京都診断士協会まちづくり研究会

会長 名取雅彦

 

 

※1 まちの中心に位置し、 地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点 としての役割を果たす市街地一般を対象とすることを明確にするため、本稿では できるだけ 「中心市街地(まちの中心)」と表記することにした。中心市街地活性化法における対象の規定については巻末用語集を参照