おわりに

 前回の提言書「中心市街地活性化2.0」(2021年3月)の執筆時点では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響や、ICTを活用したまちづくりの動向は、まだまだ変化の余地も大きく、その趨勢を確認する必要があった。

 

 今回、その後の社会環境を振り返ることにより、東京都心部からの人口流出傾向はいくぶん収まる兆しがあり、ウィズコロナのもとで生活行動範囲が拡大し、里帰りや旅行も再開し始めたこと、コロナ禍が終息し、アフターコロナのフェーズに移行すれば、こうした傾向はさらなる拡大が見込まれることなどを確認した。

 

 一方、企業立地や就業形態の変化は、情報化の進展による側面も大きく、地方分散に向けた政策とあいまって、就業規則・産業立地の変化や、生活行動の構造的な変化が進行、定着しつつあり、こうした変化を促進するために、地域生活圏の拠点として「身近なCBDとしての中心市街地」を目指すべきであり、そのために、「地域生活圏の拠点形成」「中心市街地活性化2.0」という2つの課題に対応すべきことを提起した。

 

 中心市街地(まちの中心)は、地域の市場結節点であり、中小企業診断士が支援対象としている中小企業や商店街の立地点である場合も多い。したがって、「身近なCBDとしての中心市街地」の形成は、まちづくり関係者に対してだけでなく、こうした産業や、地域団体の活力を支えるエコシステムの形成に関わる問題提起でもある。

 

 本稿が、今後のまちづくりやまちづくりに関わる政策形成はもとより、中小企業の支援活動等の参考にもしていただければ幸いである。